【第13回:脳科学的アプローチで創った経営指針書こそが社員を奮起、定着させる!】

経営指針書は、作ることもさながら、運用が大事です。

そして、運用の中で一番大事なことは、「社長が語りかけるときの順番」です。

今回は、この「順番」につきまして、一緒に考えて参りたいと思います。

私は、経営指針書の運用について、以下のような相談を頻繁に受けます。

「昨年、初めて経営指針書を作りました。」

「最初に経営指針書を作るとき、『作成を支援頂いたコンサルの方から、経営指針書が定着するまでに、10年かかります。10年運用すれば、少しずつ社員のモチベーションが向上し、会社の業績は向上してきます。』と言われました。」

「作成後、コンサルの方が、経営指針書を社員に発表するよう言われたので、社員の前で発表しました。」

「ところが、社員の反応はイマイチでした。」

「コンサルの方は、『最初の一年目は、そんなものです。』と言われました。」

「北島先生、10年後の当社は、経営指針書に感化された社員が奮起し、業績が向上している未来に、本当にたどり着くのでしょうか?」

このやりとり、どう思われますか?

日本企業の10年生存率が6.3%と言われる中、10年も待っていられるはずがありません。

私は、その社長にお伝えしました。

「就業年齢人口減少が続く中、10年後に、社員のモチベーションが向上する運用!」

「その運用、根本的に間違ってるとは思いませんか!」

私は、ご相談いただいた社長に、必ず質問することがあります。

それは「経営指針書の説明は、どのような順番で進められましたか?」です。

多くの方々は、「作成した経営指針書を、頭から順番に話しました。」と言われます。

そして、内容を深く伺うにつれて、

その方々は、脳科学的アプローチとは真逆なアプローチをされていることが分かります。

ここで、「経営指針書を魔法の書に変える脳科学的アプローチ」について、

簡単に伝えさせていただきます。

脳科学アプローチでは、他者に意思決定を促す際、以下のステップを踏みます。

第一に、感情(大脳辺縁系)に訴えかけ、信頼関係を築きます。

→事実やデータなどの理性的な情報から入るのではなく、物語を用いることで、顧客の感情や本能に働きかけます。

第二に、相手の理想の未来に、理想の未来を阻む障害に耳を傾けます。

第三に、障害を取り除く道を、専門性を交えつつ示します。

最後に、大脳新皮質に理性的な情報を提示します。

→感情的なつながりと信頼関係を築いた上で、事実、データ、数字などの理性的な情報を提示し、意思決定を後押しします。

上記のプロセスで、社長から社員に語りかけていれば、経営指針書は魔法の書となるのです。

社員の定着とモチベーション向上による生産性向上が、同時進行的に起こっていくのです。

経営指針書の運用が上手くいかない会社は、

社長の経営指針発表時、第一のプロセスで致命的な失敗を犯しているのです。

社長の経営指針発表時、行うべきこととは、一体、どのようなことだと思われますか?

社長が、どのような想いで、この仕事、この事業に取り組んでいるのか?

縁あって入社した社員の幸せについて、どのような想いで、事業に取り組んでいるのか?

御客様に、社会に、この国のために、どのような会社で、社長でありたいのか?

こうした事を、感情(大脳辺縁系)に訴えかけて、社員と信頼関係を築くのです。

この第一段階で失敗している企業が、余りに多いため、

多くの企業が、経営指針書の運用が功を奏すまでに、10年という年月を要するのです。

深刻な人材難に直面する中小企業の10年間は死活問題です。

だからこそ、私は、コンサルティングにおいて、

経営指針書を魔法の書とするため、この第一段階を重視しているのです。

次回のコラムでは、第二段階以降にフォーカスを当て、

経営指針書が盛り込むべき内容について、脳科学的アプローチの観点から、考えて参りたいと思います。