第58号:会社は大きくなるほど内側から崩れやすくなる――ファミリービジネスを蝕む“ガバナンスの罠”
先週、あるメガバンクからの紹介で
ある全国チェーンのサービス業のオーナー社長から相談をうけました。
その社長曰く、家族が会社のことでぎくしゃくしており、
そのことが会社経営に負の影響をもたらしているとのことでした。
その業界では誰もが知る存在となり、
全国に店舗を展開している企業です。
代表はすでに80歳を超えておられ、
事業としては大きく成長しているにもかかわらず、
ありとあらゆる意思決定が、創業当時の“生業の状態”から、
ほとんど進化していないのです。
この会社では、
この問題が家族の問題なのか、所有の問題なのか、経営の問題なのか、
境目が全くありませんでした。
家族の問題、所有の問題、経営の問題、
全ての意思決定は、このオーナー社長の一存で決まり、
家族は、結果だけを伝えられます。
その結果、ファミリービジネスが潤えば潤うほど、
家族はぎくしゃくしていったのです。
ここに、ファミリービジネスの本質的な問題があります。
多くの企業は、ゼロからスタートします。
創業当初は、全ての意思決定を社長一人で行います。
そこに、家族が支え、会社は育っていきます。
この段階では、家族も株主も経営も完全に一体です。
しかし、会社が成長し、規模が拡大しますと、
家族、株主、経営は分化していきます。
そして、意思決定の流れ、お金の流れに関するルールや役割分担、
「いわゆるガバナンス」が必要になります。
多くの企業は、この段階に至るまで、少しずつ成長していきます。
そのため、社長だけが、その変化に対する対応の必要性に気づかないまま、
生業の延長線上で経営を続けてしまうのです。
その結果、何が起きるのか。
会社は大きくなればなるほど、家族関係が悪くなる。
会社が大きくなればなるほど、意思決定の不整合が起きているように感じる。
この“構造のズレ”こそが、
最終的には、ファミリービジネスを内側から瓦解させるのです。
今回ご相談いただいた企業も、まさにそのような状態にありました。
事業としては成功している。
しかし、何かがおかしいような気がする。
そこで、メインバンクに相談され、
私に相談に来られることとなったのです。
ファミリービジネスを危うくさせる「ガバナンスの欠如」とは何か。
本コラムでは、この「ガバナンスの欠如」について、
そして、いかにすれば「ガバナンスの欠如」を防げるのかについて、
実務的な視点から、お伝えしてまいります。
経済産業省が開催した「ファミリービジネスのガバナンスの在り方に関する研究会」は、
まさに、ファミリービジネスの全体像と、「なぜ問題が起きるのか」
という構造を整理したものでした。
前回のコラムでは、その内容を受けて、
ファミリービジネスの強さと弱さを整理してきました。
そして今回のコラムでは、
「第2回ファミリービジネスのガバナンスの在り方に関する研究会」の内容を受けて、
「では具体的にどうするのか」という実務レベルの話に踏み込んでいます。
結論はシンプルです。
ファミリービジネスの成否は、
“ガバナンス=ルールづくり”で決まります。
まず押さえるべき前提として、日本企業の大半はファミリービジネスです。
その強みは、①意思決定が速い、②長期視点で経営できる、という点にあります。
しかし、その強みは同時にリスクにもなります。
なぜなら、「家族・所有・経営」が三位一体となっているからです。
家族としての感情、株主としての利益、経営としての合理性。
この三つが同時に存在し、それぞれがぶつかることで、
意思決定が曖昧になり、経営が“なんとなく”で進んでしまう。
これこそが、ファミリービジネスの最大のリスクです。
第2回の議論では、このリスクにどう向き合うかに集中しています。
その答えが、「ファミリーガバナンスの規範づくり」です。
つまり、「家族だから」ではなく、
「ルールだから」で意思決定を行う仕組みを持つことです。
この視点を外せば、
どれだけ事業が強くても、会社は必ず内側から崩れます。
では、そのルールとは何か。
私は現場経験から、三つに集約できると考えます。
①家族の関与ルール
②話し合いの場の設計
③所有と経営の分離
です。
まず①家族の関与ルールです。
誰が会社に入るのか、誰が経営に関与するのか。
これを曖昧にしたままでは、必ず混乱が起きます。
「親族だから役員」「長男だから社長」
この判断は一見自然ですが、
ファミリービジネスの永続性とは整合しません。
“家族であること”と、
“経営を任せること”は、全く別の話です。
次に②話し合いの場の設計です。
多くの企業では、経営の話と家族の話が混ざっています。
しかし、これは必ず歪みます。
経営は合理性、家族は感情です。
この二つを同じ場で議論すれば、どちらかが壊れます。
だからこそ、
・経営の問題は経営会議
・株主の問題は株主総会
・家族の問題は家族会議
と、場を分ける必要があるのです。
そして③所有と経営の分離です。
会社のお金と個人のお金が混ざる。
これは小規模企業ほど起きやすい問題です。
この状態では、
投資判断も、配当判断も、すべてが歪みます。
だからこそ、
「オーナーとしての判断」と「経営者としての判断」を
分ける必要があります。
さらに重要なのが、「誰が経営するのか」です。
これは最も避けられないテーマです。
長男だから、親族だから、ではありません。
「経営は能力で決める」
この原則に立てない企業は、
必ずどこかで競争力を失います。
また、家族だけで意思決定を完結させることも限界があります。
外部の視点が入らないと、
「身内では正しいが、外では通用しない」判断が積み重なります。
だからこそ、専門家の存在が重要になるのです。
ここまでを一言でまとめます。
ファミリービジネスのガバナンスとは、
「家族を排除すること」ではありません。
「家族をコントロールする仕組みを持つこと」です。
では、どうすればよいのか。
私は、こう断言します。
ファミリービジネスの機能不全の本質は、三点に集約されます。
①意思決定の曖昧さ
②意思決定の場の曖昧さ
③境界の曖昧さ
です。
この曖昧さを解消するために必要なのが、
キラー経営資源の明確化です。
キラー経営資源とは、
「なぜ自社が選ばれているのか」という核心です。
これを明確にすることで、
ファミリービジネスの永続的繁栄にむけた方向性が定まります。
方向性といった抽象的なものには、
それを具体化させる“象徴的存在”が必要です。
そして、その象徴的存在となり得るのが、
エンジェル税制認定企業です。
エンジェル税制認定企業を通じて、
キラー経営資源磨き上げへの方向性が浮き彫りになります。
経営と所有と家族の関係が整理できるようになってきます。
結果として、
意思決定の曖昧さが消え、
ファミリービジネスの永続的繁栄に向けて、
より最適な判断ができる組織へと変わっていきます。
なお、ここまでお読みいただいたオーナー社長の皆様の中には、
「うちも、家族のこと、株式のこと、経営のことを、なんとなくで決めてきたかもしれない」
「どの内容を、どこで議論するかが、曖昧になっていたかもしれない」
「今論じている問題が、どこに起因する問題なのかが曖昧だったかもしれない」
と感じられた方もおられるのではないでしょうか。
ファミリービジネス本来の強さは、
家族であるからこそできる“速い意思決定”と“長く続ける覚悟”にあります。
しかし、その強さを“永続性”へと変えていくためには、
「ファミリービジネスが迷わないための仕組み」を持った経営へと、
進化させる必要があります。
そのために重要なことが、
キラー経営資源を見極め、磨き上げの方向性を見極め、
そして、その方向性を形にする存在として、
エンジェル税制認定企業を活用した新たな事業構想があれば、
「ファミリービジネスが迷わないための仕組み」を持ち得るのです。
家族の視点、所有の視点、経営の視点が明確になり、
各々の論点について話し合う場を整理することで、
これまで曖昧だった意思決定が、驚くほどスムーズになるのです。
なお、本コラムでお伝えした内容、
エンジェル税制を活用したファミリービジネスの再設計について、
さらに詳しく知りたい方は、ぜひ下記よりお問い合わせください。
▶ https://www.mku-consulting.com/maximuminc/
代表電話(03-5843-7228)にお電話をいただけましたら、
私のほうから折り返しご連絡もいたします。
一人でも多くのオーナー社長が、
家族経営の強さをそのままに、
迷わない経営の仕組みを手に入れ、
永続不滅のファミリービジネスを実現されますよう!

