第59号:この3点を決めた企業だけが永続不滅のファミリービジネスへの道を歩める!
先日、ある地銀からの紹介で、
ある分野では国内唯一の技術を持つ、地方都市の企業に伺い、
事業承継後の未来について、ご相談を受けることになりました。
社長は70代前半。
2代目経営者として、これまで会社を牽引してこられました。
その社長は、自らへの事業承継において、
骨肉の争いともいえる御家騒動を経験されています。
そのため、今回の承継にあたっては、
「自分と同じ苦労はさせたくない」という強い想いのもと、
ご自身なりに、しっかりと準備を進めておられました。
実際にお話を伺いますと、
すでに意思決定は明確にされていました。
家業に唯一身を投じてきた次男である専務に、
会社と工場用地を承継させる。
一方で、長男と妻、長女には、
それ以外の財産を分ける。
すべては、「先代が何も決めないまま亡くなったことが、あの苦労の原因だった」
というご経験から導き出された、極めて合理的なご判断でした。
実際、このお話だけを伺いますと、
「現経営者が重要な判断を先送りにしない素晴らしい事例だ」
と感じられる方も、多いのではないでしょうか。
しかし、私はその瞬間、ある違和感を覚えました。
財産の状態を確認させていただきましたところ、
・会社には役員借入金がある
・工場用地は会社ではなく、社長個人の所有である
・株式は、社長49%、奥さま17%、専務17%、長男17%
・さらに、税理士は「株価をゼロにして承継すれば問題ない」という前提で整理している
しかも、奥さまと長男は、専務への事業承継を認めておられませんでした。
この状態を見たとき、私は確信しました。
「このままでは、御家騒動になる!」と。
「国内唯一の技術承継が断たれる!」と。
なぜなら、現社長の意思決定としては「専務に承継する」と決まっている一方で、
それを支える構造が整理されていないからです。
専務は現場を担い、現社長と共に、会社を成長させてきた当事者です。
一方で、奥さまと長男も株主としての立場を持っています。
それぞれが、それぞれの立場で、
正当な主張を持ち得る状態にあるのです。
つまり、「各々が各々の立場で正しいと思えることを言える状態」になっているのです。
今回のケースは、
「何も決めていない」ことが問題ではありません。
「決めているにもかかわらず、構造の問題に着手できていない」
ことが問題だったのです。
もちろん、社長のご経験に基づいたお考えは、
十分すぎるほど理解できます。
何も決めなかった先代の姿を見てきたからこそ、
“決めること”の重要性を、誰よりも分かっておられる現社長。
だからこそ、今回の承継では、
現社長が全てを判断し、その判断に基づいて、実行に移されようとしていたのです。
しかし、ここに、
ファミリービジネス特有の“見えにくい落とし穴”があります。
「ファミリービジネス特有の構造の問題に着手した上での意思決定になっているか」
という問題です。
ここに、ファミリービジネスの本質的な問題があります。
今回ご相談いただいた企業は、
構造の問題への着手なき決定がなされておりました。
事業構想のコンサルティングは一旦、小休止となり、
事業承継のコンサルティングから始めさせていただくこととなりました。
ここで、経済産業省が進めている
「ファミリービジネスのガバナンスの在り方に関する研究会」に目を移します。
「ファミリービジネスのガバナンスの在り方に関する研究会」は、
第1回・第2回・第3回と議論が進む中で、
単なる制度論ではなく、
「会社はなぜ内側から崩れるのか」という本質に踏み込んできています。
第1回では問題提起。
第2回では構造の可視化。
そして第3回では、決定的な結論が示されました。
それは、
「ファミリービジネスはルールでは制御できない」
という現実です。
会社はルールで動きます。
しかし、家族は感情で動きます。
ここが、ファミリービジネスと一般の企業との決定的な違いです。
だからこそ、ファミリービジネスにおいては、
どれだけ制度を整えても、
本音が整理されていなければ、必ずどこかで崩れます。あ
さらに重要なのは、第3回目の議論では、
問題の本質が「制度ではなく人にある」と整理された点です。
株主の構成や組織上の役職は、あくまで表面的な問題です。
本当に会社を揺るがすのは、信頼、感情、人間関係です。
ここを無視して制度だけ整えても、
むしろ対立は固定化され、深刻化します。
そして、研究会を通じて明らかになったもう一つの事実。
それは、
**「最大のリスクは、家族仲が良いこと」**です。
仲が良いから話さない。
仲が良いから決めない。
仲が良いから先送りする。
そして、ある日突然、崩れます。
先送りした意思決定を強いられる、その日が!
私はこれまで、数多くのファミリービジネスを見てきました。
その中で断言できることがあります。
仲の良い家族ほど、問題を先送りするのです。
では、どうすればよいのでしょうか。
結論はシンプルです。
①誰が株を持つのか
②誰が経営するのか
③家族がどこまで関与するのか
この3点を、家族仲が良い内に、決めておくのです。
そして重要なのは、
単に、①②③を決めることではありません。
・どの条件を満たしたときに
・どういう立場で関わるのか
・そして、それぞれの問題を、どの会議体で議論するのか
を整理することです。
大事なことなので、もう一度お伝えします。
問題は「意思決定の有無」ではありません。
構造の問題に着手した上で、意思決定が行われているかです。
こうした構造の問題を整理するために不可欠なのが、
キラー経営資源の明確化です。
キラー経営資源とは、
自社がお客様から選ばれている理由の核心です。
これを磨き上げ、その方向性を明確にすることで、
ファミリービジネスの進むべき道も、
そこに至るまでの家族の役割も自然と整理されていきます。
そのためには、問題の整理を容易にしうる象徴的存在が必要です。
そして、その象徴的存在になり得るのが、
エンジェル税制認定企業なのです。
ここで言うエンジェル税制認定企業とは、
ファミリービジネスの方向性を定め、
「誰がどのように貢献するのか」ということに関して、
判断基準を与える存在なのです。
つまり、感情ではなく、
ファミリービジネスが進むべき道に進むための貢献として、
各々の立場について語れる状態をつくるのです。
そのための近道が、上記①②③を決めることなのです。
なお、ここまでお読みいただいたオーナー社長の皆様の中には、
「うちの家族は仲が良いから大丈夫と言いきかせてきた」
「家族のことは、あえて深く話さないようにしてきた」
「家族とファミリービジネスとの関わり方を、はっきり決めてこなかった」
と感じられた方もおられるのではないでしょうか。
ファミリービジネスの本質は、
家族であるからこそ支え合い、乗り越えていける強さにあります。
しかし、その“仲の良さ”が、根拠のない安心感を生み、
知らず知らずのうちに、問題を先送りする要因にもなります。
本来、利害関係がなければ、家族は自然と仲良くいられる存在です。
しかし、そこにファミリービジネスという利害関係が関わることで、
それぞれの人生に関わる“利害”が生まれます。
だからこそ、触れにくい。
だからこそ、話さない。
だからこそ、「今はいいだろう」と先送りしてしまう。
しかし、その先送りこそが、
後に大きな対立となって表れるのです。
ファミリービジネスを永続させるために必要なのは、
仲の良さを維持することではありません。
仲の良さを保ちながら、向き合うべきことに向き合える仕組みを持つことです。
家族の問題、所有の問題、経営の問題を分け、
それぞれについて、誰がどのような条件で関わるのかを明確にする。
そして、それぞれのテーマを、どの場で話し合うのかを整理する。
こうしたことの積み重ねが、
感情の衝突を減らし、意思決定を前に進めます。
さらに、キラー経営資源を磨き上げる方向性を明確にし、
その象徴的存在であるエンジェル税制認定企業を軸に整理していくことでも、
感情の衝突を減らし、意思決定を前に進めることが可能となります。
その状態をつくることが、
ファミリービジネスを永続的に繁栄させるための本質です。
なお、本コラムでお伝えした内容、
エンジェル税制認定企業を活用したファミリービジネスの再設計について、
さらに詳しく知りたい方は、ぜひ下記よりお問い合わせください。
▶ https://www.mku-consulting.com/maximuminc/
代表電話(03-5843-7228)にお電話をいただけましたら、
私のほうから折り返しご連絡もいたします。
一人でも多くのオーナー社長が、
家族の強さをそのままに、
“先送りしない経営”へと一歩踏み出し、
ファミリービジネスが永続的に家族全員を幸せにする存在でありますよう!

