【第14回:脳科学的アプローチに欠いた経営指針書は“ダメ社員”“ボロ会社”を生む!】
経営指針書が魔法の書となれば、社員は奮起し、自社が採用難、人材難で困ることなど、絶対にありえません。
人的資源は、経営資源の中で唯一、財務諸表に表われる数字を遙かに超える潜在的可能性を持ちえていると言えます。
人的資源の強さは、まさに、自社の未来を大きく左右する最大のキーです。
そして、私のコンサルティングの最大のテーマ、
中小企業が人材の宝庫となり、一つの事業にとどまらず、新たな事業に成功を収め、永続的繁栄を手にするために、コングロマリッド展開を図る際も、最大の力となります。
そこで、今回のコラムでは、「経営指針書を魔法の書とするために盛り込むべき最低限の内容」について、述べさせていただきます。
まず、経営指針書を、自社を人材の宝庫とする魔法の書にするためには、
「経営指針書は運用が命」「運用の中でも順番が命」です。
前回のコラムでお伝えしましたとおり、その運用を成功させるのが、脳科学的アプローチに基づいた経営指針の順番です。
そして、経営指針の内容は、脳科学的アプローチの順番を成立させるため
必要な要素を盛り込んでいなければなりません。
逆に、それ以外の内容は、あってもなくても、それぞれの会社の自由と言えます。
前回のコラムでは、「脳科学的アプローチは順番が命」とお伝えしましたが
まずは、前回触れました「順番」について復習しておきます。
第一に、感情(大脳辺縁系)に訴えかけ、信頼関係を築きます。
→事実やデータなどの理性的な情報から入るのではなく、物語を用いることで、顧客の感情や本能に働きかけます。
第二に、相手の理想の未来に、理想の未来を阻む障害に耳を傾けます。
第三に、障害を取り除く道を、専門性を交えつつ示します。
最後に、大脳新皮質に理性的な情報を提示します。
→感情的なつながりと信頼関係を築いた上で、事実、データ、数字などの理性的な情報を提示し、意思決定を後押しします。
脳科学的アプローチは順番が命です。
特に、第一のステップを誤りますと、経営指針の運用は、全て成り立ちません。
まず、第一では、社長が、なぜこの仕事をしているのか?
この会社は、なぜこの事業なのか?
社員を、世の中を、どうしていきたいのか?
社長自ら、今の考えに至ったストーリーを語りかけます。
「その結果、こういう理念を掲げ、こういうミッションを得て、こういうビジョンのもと事業を行っている。」ということを語りかけます。
そう致しますと、第一段階で必要な内容は、①今の考えに至ったストーリー、②理念、ミッション、ビジョン(10年)となります。
第二段階は、実運用では、人事との連携が必要になりますが、
人事との連携につきましては、数ヶ月後のコラムにて触れさせていただきます。
経営指針書では、「多くの社員が抱いている理想の未来について、社長がどんな未来を実現しようと思っているか!」
「そのために、どのような障害があるか!」語りかけます。
そう致しますと、第二段階で必要な内容は、③給料、休暇、福利厚生、機会提供における未来、④理想の未来への障害(必要な要素、経営数値)となります。
第三段階では、「障害をクリアし理想の未来を実現するための処方箋=万能薬」を示します。
そう致しますと、第三段階で必要な内容は、⑤ありとあらゆる方針(●●における方針)、⑥方針を実現する具体的計画(行動計画)となります。
最後は、大脳新皮質に理性的な情報を提示する段階です。
第一段階で、感情的なつながりと信頼関係を築いた上で、事実、データ、数字などの理性的な情報を提示し、意思決定を後押しする段階です。
この段階で、「数字という万人にとっての共通語」を用いて、「社員の願望」と「会社の願望」を堅く結束させます。
そう致しますと、第四段階で必要なのは、⑦⑤⑥の結果得られる数値計画、⑧会社が重要視する経営指標(⑦と③④を結びつける経営指標)となります。
これら、①から⑧を盛り込み、正しい順番で運用することで、経営指針書は魔法の書となるのです。
今回は、紙面で伝える限界もあり、要点だけを、伝えさせて頂きましたが
実際、私が経営指針書の作成をコンサルティングで行う際は、会社ごと個別の事情を盛り込む必要がありますので、こんな単純には語れません。
ただし、経営指針書の運用に成功し、経営指針書を魔法の書として、人材難、採用難を吹き飛ばし
自社を人材の宝庫とするために必要な、経営指針に盛り込むべき内容についてのアウトラインは、御理解頂けたと思います。
今回のコラムでは、社長が経営指針書を如何に扱うかを述べさせて頂きましたが
実際、経営指針を魔法の書にしていくためには、社長が人事と連携する運用もキーになります。
そうした運用につきましては、数ヶ月後のコラムにて述べさせて頂こうと思います。