【第19回:経営する会社が増えた社長は時間もお金も自由自在!】
経営する会社が増えますと、社長は富だけでなく、自由な時間も増えます。
実際、コラム第1回から第6回で紹介させていただいた、2人の成功したコングロマリットビジネスオーナーは、毎日夜中まで会社に残っていたかと申しますと、
会社の数が増えれば増えるほど、その2人の社長は定時前に帰宅するようになっていきました。
では、なぜそのようなことが可能になるのでしょうか?
このコラムをお読みいただいている経営者の中には、「一つの会社を経営するだけでも、社長は24時間365日働きづめなのに、そんなことがあるはずがない!」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
あるいは、「うちの会社は、社長はすべての書類に目を通さなければならない」「社長が現場を離れたら会社は崩壊する」と考える経営者もおられることでしょう。
では、なぜそれでも会社の数が増えていく中で、時間の余裕が生まれていくのでしょうか?
理由は、コングロマリッドビジネスとは、社長が富だけでなく、自分の時間を増やすことで成長するビジネスだからです。
私が社会に出て初めて入った会社、大正製薬では、当時「上司たるもの、どの部下よりも早く出社し、どの部下よりも遅くまで残業すること」が美徳とされていました。
社会に出たての頃、教えられたことは、その後も、大きな影響を与えるものです。
その後、上場企業の事業責任者として経営を担うようになった際、私は、誰よりも早く出社し、誰よりも遅くまで会社に残っている事業経営者でした。
その結果どうなったか?と言いますと
平日の昼間は普通に仕事をして、土日や夜中は社内で仕事をしているという生活を繰り返した結果、睡眠時間は削られ、疲れが取れないまま意思決定を強いられ、経営判断のミスも増えていきました。
当時の私は事業経営者ですので、私の判断ミスの影響は事業部の範囲で収まります。
では、社長が、どの社員より早く来て、どの社員よりも遅く帰社していたら、会社はどうなると思われますか?
社長自身は疲弊し、経営判断は鈍り、判断ミスを犯すかもしれません。
社長は「業績に責任を持つ唯一の存在」です。
「うちの会社は、社長はすべての書類に目を通さなければならない」「社長が現場を離れたら会社は崩壊する」と考え、自ら重労働を強い、疲弊する方向に持っていく社長は、社長の仕事をはき違えているのです。
社長の仕事は、社員の日常の行動を管理することではありません。
会社の未来のため、意思決定することなのです。
社長の仕事は、「会社の未来を輝かしいものにするため、戦略構想を立て、戦略実行のための意思決定をすること」です。
その社長が疲弊し、経営戦略を間違えれば、会社はたちまちのうちに衰退していきます。
今の世の中、社長がクリエイティブな未来を描けない会社は発展しません。
社長の決定が、常にクリエイティブであるよう、社長は、自分の時間を大切にしなければならないのです。
一方、クリエイティブな未来を考えるときには右脳を使います。
社長が「休息を十分取る」、「運動をする」「趣味に時間を遣う」「芸術に触れる」「自然に触れる」「動物に触れる」等々、右脳をあたためる活動をすることで、他の会社よりクリエイティブな未来を描き、クリエイティブな意思決定が行えます。
さらに申し上げますと、社長が、どの社員よりも早く来て、どの社員よりも遅く帰るような生活を繰り返したら、社員の日常はどうなりますか?
社員の仕事は、一日の3割しか、自分の仕事に使えないと言われます。
残りの7割は、社長や上司から発生する指示への対応によって消耗されるのです。
社長が定時前に帰ることは、社員が本来やるべき仕事を進めるための時間を与えることにつながります。
これも、会社全体の生産性を高めるために、社長に求められる重要な仕事の一つなのです。
社長が、どの社員よりも早く来て、どの社員よりも遅く帰るような生活をしても、誰もハッピーにはならないのです。
ここまでは、一般の経営学の本でも書かれているようなことかもしれません。
ところが、私のコンサルティングでは、もう一つ重要な論点として、キラー経営資源強化の視点に注視します。
では、キラー経営資源の視点を備えた社長のコングロマリッドビジネスオーナーの仕事とは、一体何でしょうか?
それは、現在の環境や未来の環境変化を見極め、現在のキラー経営資源強化の方向性が正しいかどうかを、得意先のお客様との直接面談を通じて判断し続けることです。
そして、コングロマリットビジネス全体と各々のビジネスにおいて、キラー経営資源強化に向かう経営が行われているかを眺めつつ、全体がその方向に向かうよう、オーケストラの指揮者としての役割を果たすことです。
その結果、人、モノ、カネ、情報、ノウハウの磨き上げが、キラー経営資源強化の方向に向かい、ビジネス全体が大きくなるのです。
コングロマリットビジネスとは、富だけではなく、社長の自由な時間を増やすビジネススタイルなのです。
だからこそ、会社が増えれば増えるほど、社長は、富も時間も自由になるのです。
このことは、良い意味での「鶏が先か卵が先か」の議論と言えます。
だからこそ、多くの社長が社長の仕事に専念することで、全ての人が幸せになれる会社運営が図られますよう願ってやみません。