第27号:メルカリ・freee・SHElikesに学ぶ――エンジェル税制が挑戦を力に変える

エンジェル税制は1997年の創設以来、幾度も改正を重ね、今日では日本のイノベーションを後押しする確かな仕組みへと育ってきました。

私はこの制度を「単なる節税策」ではなく、「未来の技術革新を孵化させる国家インフラ」だと捉えています。

実は、日本でも、エンジェル税制を活用し、大きな技術革新と成功を収めた企業が出始めています。

そして、その象徴的な成功事例が、メルカリ、freee、SHElikesの三社です。
今では誰もが知る存在となったこれらの会社も、「エンジェル税制がなければ、今の形には絶対になっていなかった」とまで言われています。

これらの成功事例を通じて、前回のコラムでお伝えしたエンジェル税制のメリットがより具体化されるものと思います。

その結果、このコラムをお読みのオーナー社長が、自社がエンジェル税制の認可を受けた企業を設立することで、研究開発と技術革新が牽引する成長イメージを持っていただけましたたと存じます。

【メルカリの事例】
最初の事例は、2013年に創業したフリマアプリの代表格・メルカリです。
同社は「スマホ一台で誰もがフリマを楽しめる新しい市場をつくろう」と立ち上がり、創業間もない頃からエンジェル税制を積極的に活用していました。

創業間もない頃のメルカリは、銀行融資に頼ることもできず、資金調達の道は閉ざされていました。
そこで目を付けたのが個人投資家でした。

しかし、リスク回避志向が強い日本では、個人投資家がメルカリのようなベンチャーに資金を出すのは、とてもハードルが高いものでした。
そこでメルカリは、エンジェル税制の認可を受けることで、投資家に安心感を示す道を選んだのです。

同社は、投資額を所得から控除できる「優遇措置A」、株式売却益の課税を繰り延べできる「優遇措置B」の対象企業となることで、個人投資家から投資を受けることに成功しました。

投資家にとって、エンジェル税制による“ご褒美”を明確に提示できたことで、アーリーステージの段階で、複数のエンジェルから資金が集まりました。
その資金が事業の発展を加速させ、2018年6月18日東証マザーズに上場を果たしたのです。

【freeeの事例】
クラウド会計サービスのfreeeも、創業当初からエンジェル税制を積極的に活用しました。

創業者の佐々木大輔氏は、開発資金と人材を集める仕掛けとして「多様な個人投資家の参画」にこだわりました。
そこで、佐々木氏が自らエンジェル税制を研究し、認可を取得しました。

私自身もそうでしたが、エンジェル税制は少し複雑です。
ただ、少し腰を据えて取り組めば十分に理解できる制度です。

一方で、多くの経営者は経済産業省のホームページを見て、その複雑さに触れた時点で理解することを諦めてしまいます。
だからこそ、あえて少しだけ努力して仕組みを理解し、活用できれば、他社と大きな差をつけることができるのです。

同社がエンジェル税制の認可を受けたことで、投資家は制度を通じた節税メリットを得つつ、新たなSaaS市場に挑むfreeeに投資しました。
同社は、投資家が節税メリットを得られる環境を整えたことで、多様な個人投資家からの資金が集めることに成功したのです。

さらに投資家の専門知識や人脈が事業運営に活かされ、freeeは一気に全国展開を進めました。
freeeの投資家は単なる出資者ではなく「共創パートナー」でした。
同社を国内SaaSリーダー企業へと成長するための後押ししたのです。
その結果、資本調達と経営基盤強化が同時に進む“成長の方程式”が成立しました。

そして、2012年7月の創業からわずか7年後、2019年12月17日には東証マザーズへの上場を実現したのです。

同社の事例は、エンジェル税制を活かすことで、資金調達だけでなく、投資家の協力による経営基盤の強化を同時に成し遂げた事例として参考にできる事例ではないでしょうか。

【SHElikesの事例】
2017年設立の女性向けキャリア支援サービス「SHElikes」も、創業当初からエンジェル税制を活用して成長してきた企業です。

同社も、エンジェル税制の認可という経済産業省のお墨付きを得ることで、多くの個人投資家にアクセスすることが可能となりました。
その結果、同社の社会課題に共感する投資家層を中心に投資が集まりました。

同社に共鳴した投資家は、資金提供だけでなく、マーケティングやプロジェクトにも関与しました。
投資家が“伴走者”となり、事業基盤や組織が強化され、魅力あるブランド形成にも成功しました。

同社の事例は、エンジェル税制が投資家コミュニティを想像し、イノベーションを支える社会的装置として機能した典型的な事例と言えます。

メルカリも、freeeも、SHElikesも、最初は小さな一歩から始まりました。
その一歩を制度が後押しし、未来を変える企業へと成長したのです。

だからこそ、オーナー社長にお伝えしたいのです。
自社の発展のため、将来世代に「研究開発資産」と「技術革新」をつなぎたいと願うのであれば、エンジェル税制を味方につけた挑戦こそ最も確実な一歩なのです。

ご自身やご家族の資産を活用し、エンジェル税制の認可を受けた会社を一社、自ら設立してみてください。
その会社は必ず「自社の成長を育むインキュベーションの場」となるはずです。

いきなり会社を設立するのは不安だというオーナー社長は、まずエンジェル税制に触れることから始めてください。
「優遇措置A」「優遇措置B」「プレシード・シード特例」の大恩恵を、投資家の立場で体験してみてください。

その恩恵を実感できれば、次は自らエンジェル税制の認可を受け、さらに大きな恩恵へと進む道が見えてくるはずです。

エンジェル税制の大恩恵についてさらに詳しく聞いてみたいと思われる方は、ぜひ下記URLよりお問い合わせください。

▶︎ https://www.mku-consulting.com/maximuminc/ エンジェル税制の認可を受けた企業が数多くできることで、日本において「自社の成長を育むインキュベーションの場」が広がりますよう!