【第16回:応募しない企業は成長機会を逸する!経済産業省の虎の子「100億宣言」!】

経済産業省が推進している「100億宣言」をご存じでしょうか?

年商100億円規模になることを宣言した中小企業に、国が支援する取り組みです。

では何故、今になって「100億宣言」なのでしょうか?

それは、戦後の中小企業政策の変遷を見れば分かります。

戦後の混乱期(1946年~49年)の経済政策と言えば、傾斜生産政策です。

特定産業から成長させるという考え方のもと、

基幹産業である石炭と鉄鋼に資源を重点的に投入し、経済の自立を目指しました。

1963年、中小企業基本法が制定されます。

中小基本法では、大企業との二重構造の中、弱い存在の中小企業を「守る」という考えのもと、制度設計がなされました。

ところが、1999年、中小企業基本法が改定されますと、

自助努力を怠らない中小企業を支援するという考えが強くなります。

そして、2025年、「100億宣言」の公募に至りますと

国の支援の対象は、売上100億を目指す中小企業へと変わったのです。

日本経済は長らく、大企業の国際競争力こそ高いものの、中小企業の生産性は伸び悩み、いわゆる二重構造状態にありました。

グローバル化の進展と技術革新の加速により、国内市場だけでなく国際市場においても競争が激化する中、

今の政府は、“年商100億”といった高い成長目標を設定し、

その実現に向けて積極的な取り組みを行う中小企業を支援することで、経済全体の底上げを図ろうという考え方に至りました。

ニーズの多様化、市場の細分化が進んだ今、単一事業で100億を目指すことは並大抵のことではありません。

であれば、この「100億宣言」は、今後、コングロマリッドビジネスを志向する企業のために向けられた政策とも言えるのではないでしょうか。

だからこそ、コングロマリッドビジネスを実現し、成長を志向される企業は、是非とも、「100億宣言」にエントリーすべきなのです。

「100億宣言」とは、成長戦略と実現へのコミットメントです。

参加企業は、「100億宣言書」を作成し、中小企業庁の専用ウェブサイトを通じてオンラインで行います。

申請の際には、中小企業基本法に定める中小企業者であること、そして売上高100億円を目指す上で、1億円以上の事業費(税抜)を伴う投資計画を有していることが基本的な要件となります。

この宣言書には、①設立からの沿革や主要な事業内容、②現在の経営状況(売上高、従業員数など)、③企業の理念やビジョン、④経営者自身の100億円達成に向けた熱意や決意、⑤売上高100億円の実現に向けた具体的な目標(達成時期や成長の道筋など)と、その過程で想定される課題。⑥これらの課題を克服し、目標を達成するための事業戦略

の六点を盛り込みます。

どれも、経営指針書を作成していれば、転記するだけで足ります。

宣言書では、企業は自社の現状を深く分析し、将来に向けた明確な成長戦略を描き出すことが求められます。

審査のポイントは、単に売上目標を掲げるだけでなく、それを達成するための論理的な道筋と具体的な実行計画が示されているか、そして経営者の本気度とリーダーシップが感じられるかという点になります。

企業の成長戦略の妥当性、実現可能性、市場競争力、地域経済への貢献度などが総合的に評価されます。

「100億宣言」に認可された企業のメリットは、主に四点有ります。

第一は、「中小企業成長加速化補助金」への申請資格が得られます。

この補助金は、将来の成長が期待される中小企業の大規模な投資(設備投資、研究開発、海外展開など)を支援するもので、採択されれば事業拡大に向けた資金調達の一助となります。

第二に、「中小企業経営強化税制」の拡充措置も適用され、設備投資を行った場合の税額控除や特別償却といった税制上の優遇措置を受けることができます。

第三に、本宣言を通じて、高い成長意欲を持つ他の経営者とのネットワークに参加できる機会が提供されます。

第四に、「100億宣言」を行った企業は、経済産業省が提供する公式ロゴマークを自社のウェブサイトや広報資料などに使用することができます。

終戦後の傾斜生産のように、厳しい経済環境の渦中では、大きな経済政策が打たれます。

人材難、物価高騰、金利高の中で打たれたのが、「100億宣言」なのです。

事業の多角化に成功し、コングロマリッドビジネスとして成功したい。

そう思われる経営者の方は、是非とも、この「100億宣言」にエントリーすべきと思います。