【第10回社員の願望を●●で説明できない会社は優秀な人材が残らない】

これまでのコラムでは、コングロマリットビジネスを築き上げる条件として、

・①新規事業展開の方向性がキラー経営資源の視点を備えていること

・②事業経営者の決定が正しく行われていること

・③事業経営者、後継者候補が量産できる人事システムが備わっていること

・④事業拡大の資金がキラー経営資源の磨き上げの結果から得られるようビジネスモデル更新の仕組みが備わっていること

・⑤社員一人一人の願望と会社の生産性向上を数字でリンクさせ説明できる仕組みが備わっていること

とお伝えさせて頂きました。

そして、⑤は、二つの体系から成り立っていることを述べさせていただきました。

今回のコラムでは、この二つの体系の一つ目から述べて参ります。

最近では、離職防止を考える際、

「年代別に異なるモチベーションの源泉を理解した上でアプローチする」

という論調が増えてきたように思います。

こうした論調では

SNS世代の20代は”存在”

“日本の成長と豊かな日本を経験した30代~60代は”お金“

食うに困った時期を経験した70代以上は”食べ物“

社員のモチベーションの源泉は、本当に、こんなに単純なものなのでしょうか?

私は、情報入手手段の多様化が進んだ現代においては

“お金”“自分の時間”“挑戦の機会”“将来のキャリアに向けた経験や知識”等々

モチベーションの源泉は多様化し、複雑化しているように思います。

情報入手手段が少ない時代であれば

「隣の芝生が青く見えるだけ。よその会社も大差はないはず。多少嫌なことがあっても、今の会社にいよう。」

という方もおられたかもしれません。

ところが、情報過多社会においては、SNSを通じて、

“お金”“地位”“自分の時間”等々あらゆるものを手に入れた方々の姿が

毎日のように飛び込んできます。

就職や転職に関しても、情報入手手段の多様化は進んでおり

他人と比較し、より条件の良い会社に転職することが容易になりました。

終身雇用は崩壊し、若者達は容易に転職を決めるようになりました。

退職代行がビジネスになる時代です。

こうした時代でも、企業が生産性を向上させるためには

ヒトが定着し、キラー経営資源が磨かれ続ける必要があります。

では、このような時代に、ヒトが定着し、キラー経営資源を磨き続けるためには、どうすれば良いのでしょうか?

社員の給料を上げれば良いのでしょうか?

休みを増やせば良いのでしょうか?

柔軟な働き方の許容する等々労働条件を劇的に改善すれば良いのでしょうか?

生産性が現状のまま、こんなことをしていたら会社は持ちません。

私は、「こうした多種多様な社員の願望を数字とリンクし説明できる仕組みを生み出すこと」が唯一の方法だと信じています。

だからこそ、私のコンサルティングでは

「その企業のキラー経営資源に応じて企業ごとにリンクさせる数字を変え、社員の願望を数字とリンクし説明できる仕組み」

を確立します。

最後に、私が運用した、ある企業の例を挙げて終わります。

その企業は、①業界平均の給与÷自社の給与、②労働分配率(人件費÷粗利)、③労働生産性(売上高÷社員数)で説明し、社員の定着率向上と生産性向上が実現しました。

数字は、万人が図れる共通言語です。

だからこそ、数字をもとに、“お金”“自分の時間”“挑戦の機会”“将来のキャリアに向けた経験や知識”等々

様々な願望をリンクさせ、説明できる仕組みを確立すれば

社員の定着率も生産性も向上するのです。