【第9回:社員の願望に●●できない会社は多角化ビジネスに必要な人材が育たない】
これまでのコラムでは、コングロマリットビジネスを築き上げる条件として、
・①新規事業展開の方向性がキラー経営資源の視点を備えていること
・②事業経営者の決定が正しく行われていること
・③事業経営者、後継者候補が量産できる人事システムが備わっていること
・④事業拡大の資金がキラー経営資源の磨き上げの結果から得られるようビジネスモデルが組まれていること
だとお伝えさせて頂きました。
本日は、コングロマリッド5大戦略の最後の条件ついてお伝えさせて頂きます。
今まで見てきた4つの条件と同じく、
私が手がけてきた2つのコングロマリッドビジネスの中で、成功する会社の共通点をもとに、5つめの要素について探って参ります。
金融業を中核にしたグループでグループ全体の収益に貢献した会社は
・⑤不動産賃貸保証会社
・⑨大切な人に資産を行き渡らせるために創った会社
・⑪金融債権の回収、ファクタリング業
でした。
サービス業を中核にしたグループでは
・②信販会社
・⑥グループ全体の物流業
・⑦原料会社
・⑩オフィスビル経営
でした。
これら7つの会社は全て、今までの4つの条件は満たしています。
更に、もう一つ、これら7つの会社が共通して持ち合わせていた条件は、どのようなことだと思われますか?
ヒントは、これら7つの会社は、幹部社員が量産できるグループ経営システムのもと、有能な事業経営者が事業経営にあたっていたということです。
答えは、2つのコングロマリッドの中にあった、これら7つの会社は
一般社員の生産性が高く、高いモチベーションが維持されるよう会社が回っていたということです。
よく、社員のモチベーションが高いと、生産性が高くなると思われがちですが、
私は、先に高い生産性が実現し、その結果として、高いモチベーションが維持されるものと考えます。
最近、日本人の会社に対する帰属意識が、先進国最低レベルであるという調査結果を耳することがあると思います。
私は、日本人の会社に対する帰属意識が低いのは、今の日本がOECD諸国最低レベルの生産性になったからだと思っています。
事実、かつての日本企業は、OECD諸国最高クラスの生産性と高い帰属意識が両立していました。
生産性の高い組織は、モチベーションも、帰属意識も高くなるのです。
同じ企業グループの中で、成功した事業が身につけていた生産性向上のシステムは、どのようなことだったと思われますか?
これら7つの事業には、誰もが共鳴できる経営理念があったのでしょうか?
それとも、他社よりも高い給料を出していたのでしょうか?
他社よりも休みが多い会社なのでしょうか?
出世や自分を磨く機会に満ちあふれた会社でしょうか?
答えは、これら7つの事業には、
社員の一人一人の願望にアクセスし、社員一人一人の願望と会社の生産性向上を
数字でリンクさせて説明できる仕組みが導入されていたのです。
この仕組みは2つの体系から仕組化されます。
こうした仕組みは、私が事業会社の経営を行うときは、必ず意識して導入していましたが
成功した事業会社の経営者は、驚くことに、みな同様のシステムを取り入れていたのです。
次回のコラムでは、同じ企業グループの中で、成功した会社に備わっていた生産性向上のプロセスとは、一体、どのようなことだったのかにつきまして、
ほんの触りだけ、お伝えできればと思います。